世界初の脊髄再生の臨床治験開始、オーストラリアにて

嗅覚細胞(OEG)による第1相治験



 (Spinal cord regeneration trials begin in Australia AFP配信 2003年3月7日)

 2003年3月6日、ブリスベーンの医師たちが、世界初の脊髄再生臨床研究を開始したことを発表した。これは脊髄損傷者の鼻の細胞を使用し、損傷した脊髄を修復する試みである。

 最初の再生移植は鼻の嗅覚細胞を脊髄に入れるもので、2月にブリスベーンのプリンセス・アレキサンドラ病院の外科チームによって実施された。

 臨床治験は、ブリスベーンのグリフィス大学や世界各国において、脊髄を切断したラットに、OEG(olfactory ensheathing cells/glia)と呼ばれる鼻の嗅覚細胞を移植すると、数週間後に両脚を動かすことができたという実験結果に基づくものである。

 鼻の上皮細胞は脳を介して我々の嗅覚をもたらすが、この細胞は多くの神経細胞とは異なり、おそらく感染によって破壊されるために発展させる特性を持ち、一生の間再生し続ける。

 臨床治験で細胞が十分ないという障害は、個々人から集められ、ヒトの脊髄に応急処置される。グリフィス大学のチームを率いるAlan Mackay-Simはこの問題を、局所麻酔下の患者の鼻の細胞を採取する方法を開発することと、培地で大量に増殖することで解決した。

  試験的使用として、外科医が1400万個の嗅覚細胞を志願者の切断され損傷された部位に注入した。これにより、移植された細胞が損傷された部位を越えて成長し脊髄神経に架橋することが期待された。研究の詳細は3月8日に、British journal New Scientistに投稿された。

 プリンセス・アレキサンドラ病院院長のGary Evansは、「8時間の手術は際立った成功を収めた」と述べた。「6〜8髄節の神経が活性化され、それらは切断されたものであると同定することができ、移植された細胞は直接損傷部位に置かれた」と彼は述べる。

 3人の他の志願者はこの治験の後で同様の外科的措置を受けたが、全ての志願者の身元は秘匿された、と医師は述べた。治験を受けた個々の患者には、状態がどのように改善したかを見るために一連の試験が実施された。

 しかしながら、クイーンスランド脊髄再生プロジェクトのメンバーは、治験がまだ第一段階にあること、外科的手法の安全性確保の予備試験の側面を持つことに注意を喚起する。プリンセス・アレキサンドラの脊髄損傷ユニット長のTim Geraghtyは、「我々は過大な期待をもたない」という。 「これは、どのような悪影響ももたらさないようにする実験であり、それこそが第1相治験の全ての目的である」と彼は言う。

 「公正に見て、両脚の感覚が回復したり、身体をコントロールする機能の改善のような我々が何らかの前向きな見通しを得られるならよい。人々の臀部や両脚のいくつかの感覚が回復できれば、褥創予防に大きな希望が持てる。さらに進めば排泄や性的機能の改善をもたらすだろう」。




■ MediMedia Australiaのホームページより

 脊髄損傷者への世界初の脊髄再生治験を開始

 志願した脊髄損傷者の鼻から採取された細胞は、研究所で培養され、2002年6月、8時間の外科的処置によって患者の脊髄に移植された。

 クイーンスランド脊髄再生プロジェクトは、プリンセス・アレキサンドラ病院(PAH)の医師とグリフィス大学の研究者との共同研究であり、PAH基金から20万ドルの助成を得ている。この臨床治験は、8人の志願した患者により、この先駆的手法の安全性を確定すること、及び新たな脊髄損傷者の潜在的可能性を見出すことを目的とする。

 Francois Feron医師及びAlan Mackay-Sim博士(グリフィス大学生科学・生物医学学部)は、鼻のグリア細胞である特殊な細胞、OEG細胞を採取し培養する先駆的手法を持っている。


 OEG細胞とは何か 

 脳には2つのタイプの細胞、ニューロンとグリア細胞(グリア)とがある。ニューロンは神経システムの微細構造からなるユニットである。ニューロンには無数の異なったニューロンがあり、それぞれ特有の働きをしている。グリアには少数のタイプがある。ニューロンは再生できない。ニューロンが破壊されたとき、それを代替することはない。対照的にグリアは分割し増殖することができる。

 OEC細胞(嗅覚被膜細胞:Olfactory ensheathing cells=OEG)はグリアの一種である。神経システムの他の細胞のようにではなく、これらの独特のグリア細胞は一生持続的に嗅覚粘膜から再生し続ける。

 嗅覚神経を覆う細胞は鼻から脳に繋がる神経の成長を助け、グリア細胞のみが遠心性及び求心性中枢神経の双方に存在する。グリフィス大学の研究者たちは世界ではじめて、脊髄損傷に移植するグリアの供給を脳ではなく、この鼻の細胞に焦点を当てた。


 グリア細胞は幹細胞か

 肝細胞ではない。嗅覚被覆細胞は他の細胞とは区別され、特別の機能をもつ特別のタイプである。幹細胞は画一的な細胞で、多くの異なったタイプの細胞の中で別のものにする(区別する)潜在力を持っている。

 プリンセス・アレキサンドラ病院脊髄損傷ユニット長のTim Geraghty医師は、志願した患者から細胞を採取し培養してからグリア細胞を治験に用いる、とのべた。「複雑な手術のあいだ、患者は自分の細胞を脊髄に移植される。そのため、細胞の拒絶反応の危険性やそのための薬物療法は無視できる」と彼はいう。


 嗅覚被覆細胞はどのように機能するのか

 鼻の奥の嗅覚器官から小さな組織片が採取される。この鼻の組織片は酵素処理され、単細胞が懸濁液に残るまで培養される。さらにまた 被覆細胞が精製され処置されたあと、約6週間増殖のために培養される。Geraghty医師はこの第1相治験の目的は、潜在的危険性のアセスメント及び患者への効果を見極めることのあるという。

 患者はこの治験のために注意深く選択され、身体的・心理学的・神経学的評価を含む広範囲の準備が行なわれた。 彼はいう。「志願患者(テスト群・対照群)はこの治験に参加し、彼らの変化はPAH病院の医師・外科医・連携した保健チームによって3年間綿密にモニターされるだろう。」


 どのような効果を予期できるか

 治験において、対象群は治療を実施した患者との比較材料となる。この第1相治験は、何人かの判定者および研究者は治験の全期間にわたって患者群と対象群をモニターする。彼らは患者がどのような処置をされたかを知ることがないだろう。もし治療群になんらかの変化が見られたら、対照群も同様に記録される。それらは移植手法に関するものであるより、自然な変化によるものであることを意味する。

 しかし、外科処置を実施した患者のみに見られる変化であれば、細胞移植の直接の結果であろう。患者によって気付かれた主観的問題、及び通常の臨床評価によって見出された客観的問題の双方の変化は記録される。感覚・運動機能や身体コントロール機能のいかなる変化も前向きな見通しとなる。第2相の研究は、この3年間にわたる第1相治験の結果によって決定されるだろう。

<事務局試訳>


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