| 米国脊髄損傷資料集 |
| ■ II―4 専門誌掲載論文から |
基礎となっている機能
脊髄では、神経が除去された部分で芽生えが起こる。神経除去は神経組織栄養成分と化学誘引剤の調整を誘発する。これらは新しい側枝が中心線を越えて標的部まで適切に成長できるように案内をする。脊髄においてのこういった成分の性質は決められたままである。受傷位置の吻側にあり傷害によって神経除去される事がない反対側の橋と赤核で神経の芽生えが起きる事を説明するには、おそらく異なる機構が必要であろう。
この形成の型はシステムの機能的不均衡の結果として表される要因から引き起こされる。例えば神経細胞の活動により調整される神経栄養性の要因である。CNS 傷害を受けた成体において芽生えの解剖学的特殊性は標的認識に対する機構が存在している、あるいは再表現できうるということを示唆している。
機能的回復
げっ歯類の成体において脳幹のレベルで CSTの片側を損傷したら前肢を使う能力はひどく、永久に損なわれ、わずかに限られた自発的回復があるのみである。前肢を伸ばすという点で IN-1 ラットに見られた高度な機能回復は、解剖学的形成性と同様、通常は分娩時の傷害後にのみ見られる。
この機能回復を広げるのは脊髄で新たに成長する CST 分枝による、あるいは新しい両側の皮質延髄投射によると限定されたままである。IN-1 により成長が出来るようになった状況下では赤核脊髄路のような他の新経路も形成性を増やし適応する。
形成性は感覚組織や感覚皮質でも起こる。観察された機能回復が構造的形成性によって成立したのであって、傷害を負ったCST 繊維の再生によるものではないということを確かにするために、吻側の傷に第二の傷を加えた、つまり再生している繊維をも含め CST を再び切った。
IN-1 治療ラットの餌の粒を取るテストではこの過程で機能回復はなくならなかった。前肢の足跡は受傷側の外回転が増した事を示しており、IN-1 治療ラットでは逆にさせる効果があるという事を示している。
上行性体性感覚組織の最も重要な中継点である脊柱核は CST が密集して神経支配している。傷害によりこの入力は失われるが、IN-1 治療ラットでは受傷した軸索から芽がでて部分的に再構築される。 IN-1 治療後、癒着性の紙のテストは感覚の回復が高いことをあらわす。
このように我々のデータは CST が感覚情報を調節しているという示唆と一致し、受傷後の DCN の神経再支配は感覚回復に影響を与えるということを暗に示している。DCN の神経再支配の増加は癒着性の紙と餌を掴むテストにおいて少なくとも一部は感覚回復を説明する。
IN-を用いてミエリン関連軸索の成長阻害因子を中和すると、成体のラットにおいてはとても高度な構造的形成性と機能回復が引き出される。ヒトの場合 CNS 傷害の結果は損傷を被った年令に大きく依存する。つまり人生のかなり早い時期に傷害にあっていれば運動機能はずっと良好である。ヒトの脊髄はラットや牛のミエリンとかなり似た生物学的特質をもつ軸索成長阻害因子(IN-1抗原)を有している。
適切なトレーニングをすることで、脊髄損傷患者の中には少なくともある程度の歩行能力を取り戻せる人がいる事を、最近の多くの研究結果が示している。
二年前、27歳の Torsten Sauer は療法士の手を掴み、6年振りの第一歩を踏み出した。それまで彼は、1989年のオートバイの事故で脊髄の一部を断裂して胸から下がほとんど完全麻痺になってから、車椅子の生活を余儀なくされてきたのである。しかし、1995年にテレビのニュース番組に促されて、ボン大学の神経生理学者 Anton Wernig による実験的リハビリプログラムに参加するために、故郷ドイツのエルランゲンを旅立った。Karlsruhe の近くにある Wernig の診療所では、療法士は Sauerを 持ち上げて、トレッドミル上をパラレルバーにつかまりながら3メートル程歩くのを補助した。「そりゃ、驚きだったよ」と、Sauerは回想する。
10週間のプログラムでは、特別にトレーニングされた療法士に補助してもらったり、ハーネスを使って体重の一部を支えたりして、トレッドミルの上を歩く練習をする。今では、Sauer は車輪付きのウォーカーを押して彼のアパートの周りを歩いたり、本屋に立ち寄って、以前は届かなかった棚から本を取ったりできる。補助があれば、階段を数段登ることもできるのである。そして、それは Sauer だけではない。かつては車椅子生活を強いられていた何十人もの脊髄損傷患者達が、Wernig のプログラムのおかげで今ではある程度歩けるようになっているのである。
トレーニングによってある程度歩行能力を取り戻せるという考え方は、猫、そして今では人間における多くの証拠によって裏付けられてきている。その事は定説に反して、補乳類の成体においては歩くために必要な機能を、脳からはほぼ独立に脊髄が自立的に果たせる事を示している。さらには、最近のデータによると、脊髄の中で運動を司っている神経回路が自分自身の接続を変更することによって"学習"できる事を示しており、Wernig がこれまで見てきた運動能力の改善を説明できる可能性がある。
カナダのエドモントンにあるアルバータ大学で歩行の神経生理学の専門家をしている Keir Pearson は、「多くの活動が現在なされており、非常に上向きなムードがある。人々はトレーニングによって脊髄損傷者の能力を高めることができると考えている。」と言っている。
勇気付けられる結果とはいえ、まだ初期段階のこれらの結果を確認するためにはさらなる研究をする必要がある。実際、この説を擁護する人達でさえも、治療によって個々の患者においてどれだけの機能回復が期待できるかは誰にも分からないのだ、と注意を促している。さらに言えば、アメリカ合州国だけでも20万人にものぼる脊髄損傷患者の多くは、そのような方法による機能改善は望めないであろう。
スウェーデンのストックホルムにあるカロリンスカ工科大学の神経生理学者である Sten Grillnerによると、特に脳と怪我の部位以下の神経伝達がまったくないほどひどく脊髄がダメージを受けている場合には、トレーニングによって患者が歩けるようになるとは考えにくいとのことである。そういった人達は歩き始めたり止まったりするのを自分の意志でコントロールすることが非常に困難である。
さらに彼によると、運動訓練はバランスまでも回復させることにはならないというのだ。その結果、クリストファー・リーブのような四肢麻痺患者は腕を使ってウォーカーやその他の機器のところで体を支えることができず、直立姿勢に支えてもらえなければ歩くことを学習できないのである。
しかし、この訓練法がうまくいくということが、いつの日かより多くの臨床テストで本当に証明されれば、最終的には多くの脊髄損傷患者の治療法が変わることになる。今日では、問題なく動かせる筋肉を強化したり、柔軟性を保つための治療をする以外は、医者はそのような患者をほうっておくことが多い。患者を立たせたり、空中で自転車をこぐように足を動かさせたりするような現在のリハビリ手法は常に効果があるとは証明されていない。
しかし、この新手法は「『これがあなたの運命ではないかもしれないのだ。』と車椅子の人達に向かって呼びかけているのです」とクリーブランドにある Case Western Reserve 大学で生物医学エンジニアをしている J. Thomas Mortimer は言う。
彼はその訓練によって通常の歩行ができるようになることはないことを認めながらも、数歩歩くことができるようになるだけでも、数段階段を上ることができるようになるだけでも、友達の家や映画館や狭いお風呂場のような以前は行けなかった場所に入ることができるようになったりして、その人の生活を劇的に変えることができるのだということを言っている。
脊髄の鼓動に合わせて動く
哺乳類の脊髄が歩くための洗練された神経構造をもっていることが最初に示唆されたのは1910年のことである。イギリスのオックスフォード大学の神経生理学者であったCharles Sherrington が脊髄を完全に切断された猫が限られた歩行動作しかできないことを発見したのである。しかし、脊髄が運動をつかさどっていることを断定するまでにはそれから数十年かかっている。
1967年にスウェーデンの Goteborg 大学のAnders Lundberg と彼の同僚達は、"運動に関係している感覚の信号"が脊髄に入らないように、大人の猫の脊髄と脳との接続を切断してさらにすべての筋肉を麻痺させることによって脊髄を孤立させてみた。そして、その猫の脊髄ニューロンを活性化させるために、脊髄の主な神経伝達物質のひとつであるドーパミンの先駆物質である L-dopaを注射してみた。そして、足を曲げるニューロンと足を伸ばすニューロンが交互に信号を出していることが分かったのである(図1参照)。
彼らは、脊髄が運動のための"リズム発生器"を持っており心臓のように鼓動し、感覚の信号と脳のどちらからも独立していると断定した。1970年代に、同じく Goteborg 大学の Grillner と Peter Zangger は Lundberg の結果を確認しさらにそれを発展させた。彼らは、脊髄が基本的な運動リズムの信号だけでなく、筋肉ごとに異なる神経信号を送るというようなきめ細かな電気信号を作り出すことができることを示した。
研究者達が切断された脊髄から電気信号を拾っていた中、多くの研究室でその信号によって何らかの機能を得られるかもしれないという兆候を得ていた。
例えば、Grillner のチームでは、猫の脊髄を切断した場合、切断後すぐにある種の薬を投与されれば、大人の猫は一時的にしか歩けないのに対し、子猫はうまく歩くことができるようになったのだ。しかし、大人の猫で怪我をしてから時間がかなり経っている場合にはあまり歩けなかった。足を踏み出させたり、バランスを取ったりするのを助けてやらねばならず、体重も支えてやらねばならない状態であった。そして、そのような状態の動物が回復できるなどと信じている専門家はほとんどいなかった。大人になりきった脊髄は柔軟性がなさ過ぎて、受傷後に脊髄自身が独立した運動能力を獲得するために回路接続を微妙に調整するということができないと考えられていたのである。
しかし、カリフォルニア大学ロサンゼルス校とカナダのモントリオール大学でそれぞれ別のチームを率いているReggie EdgertonとSerge Rossignol の二人の神経生理学者はそれほど悲観的ではなかった。そして実際、1980年代のさまざまな研究結果から、慢性「脊髄猫」(切断された脊髄を持つ動物がこのような呼ばれ方をする)が普通の猫と同じような運動指令パターンを学習できることを両方のチームが示したのである。
例えば、1987年に公表されたある研究では、Rossignol と Hughes Barbeau(Rossignol の学生で当時博士課程を終了して研究者をしていた。現在はモントリオールのMcGill大学にいる)は3匹の脊髄猫にトレッドミル上を後ろ足で歩くようにする訓練を週に2,3回受けさせて、歩く能力が劇的に向上したことを示した。その猫たちは当初はしっぽをつかんで持ち上げてやる必要があったが、最終的には歩くあいだ臀部を自力で支えることができるようになった。
そして、トレッドミル上で立ち、ゆったりとした自然に見える歩行を習得することができたのである。それと同時に、その猫たちの歩いてる姿をビデオカメラに収めた結果から数値的な測定を行った結果、関節の角度や足の動きが無傷の猫にだんだん似てきていることが分かったのである。さらには、その猫たちの足の筋肉はより普通に近い電気的活動のパターンを示し始めたのだ。
そして、1990年代の初めに Edgerton のチームのメンバーが損傷した脊髄が学習できる内容には驚くべきほど特徴があることを発見した。彼らは、3つの脊髄猫のグループを作ってそれらの歩行能力を比べた。3つのグループとは、回復訓練をしないグループ、歩行訓練をするグループ、立つことだけを教えるグループである。歩くことを教えたグループは5ヶ月の訓練の後、他のグループに比べてより自然にそして早く歩くことができることが分かった。
対照的に立つことだけを教えられたグループはほとんど歩くことができなかった。 Edgerton によれば、この結果は脊髄が学習することができるということだけではなく、脊髄が学習する内容は脊髄が受ける感覚の入力に依存することが分かったのである。「もし猫に歩くことを教えれば、猫は歩くようになる。もし猫に立つことを教えれば、猫は立つようになる。しかし、歩けるようにはならない。」と、Edgerton は結論付けている。
このような勇気付けられる結果があるにも関わらず、ほとんどの専門家は脊髄損傷をした人間が適切な訓練を受ければ歩けるようになるという考え方を否定している。彼らは、結局猫ではなく人間において、そのようなことが起きたのを見たことがなかったのである。
ひとつの例外が McGill 大学の Barbeau のところにある。1989年に終了した試験的研究では、彼のチームは10人の患者に、40パーセントの体重まで支えることができるハーネスを使って、トレッドミルの訓練を受けさせた。その結果、トレッドミル上においても地面においても、歩くときに支えられる自分の体重の割合や歩くスピードにおいて、訓練開始時に支えなしで歩けたかどうかにもよるが、6週間後にはかなりの回復が見られたのである。1990年までに、Wernigのチームも12人の患者に関してトレッドミル訓練がよい効果をもたらしたという結果を得ている。
人にとっての小さな一歩
これらの初期の研究は規模が小さく、十分な管理ができていなかったし、人間の脊髄が運動の指令を出すための神経回路を持っているという証拠がなかったので、関心をもつ研究者はほとんどいなかった。しかし、1994年に麻痺治療マイアミプロジェクトの Blair Calancie が報告した、17年前に脊髄を部分的に切断した男性のケーススタディの中にそのような証拠が出てきた。
歩行訓練を含む集中理学療法処方を始めて一週間後、ある晩仰向けに寝ているときに突然彼の足が"歩き"だしたというのだ。その歩行が自発的なものではないので、Calancie によると、彼の足の動きは脳によってコントロールされているのではなくて大部分は脊髄で生まれた信号で動いているのだということを示唆しているという。
実際、Calancie と彼の同僚たちが、足をコントロールしている神経の活動を反映している足の筋肉の電気的活動を測定したところ、猫と同じように、伸筋および屈筋神経が時計のような規則性をもって交互に信号を出していることが分かったのである。それ以来、人間の脊髄が歩行に付随する感覚にさらされると、歩行しているような電気信号パターンを脊髄が生成するという証拠をいくつかのグループが確認した。
例えば、1995年にスイスのチューリッヒにある大学病院 Balgrist において Volker Dietzと彼の同僚達は、脊髄が完全に脳から切断されている10人の対麻痺患者を、動いているトレッドミル上にハーネスで体重を支える形で立たせることで歩行の要素を引き出すことができた。彼らは、それらの患者の足の筋肉の活動パターンはトレッドミル上を歩いている健常者のものに似ていることを発見した。
その同じ年に、ドイツにいた Wernigと彼のチームは、脊髄の歩行プログラムが受傷後の訓練に有効だとする初めての強力な論文を出した。European Journal of Neuroscience に掲載された彼らの研究では、部分的に麻痺した患者に3週間から20週間のトレッドミル訓練を受けさせた場合と、同じような患者を以前の伝統的な治療法による訓練をした場合とを比較している。
開始時には車椅子に座っていた脊髄損傷をしたばかりの36人の患者のうち33人は、トレッドミルによる訓練の後、少なくともウォーカーや杖を使って一人で歩けるようになった。対照的に、伝統的な方法による訓練では24の車椅子患者のうち12人しか一人で歩けるようにならなかった。そして、怪我をしてからもっと時間が経っている車椅子患者の場合、33人のうち25人までもが Wernig のプログラムによって一人で歩けるようになったが、以前の方法では14人中1人だけしか一人で歩けるようにならなかった。
ちょうど去年(1997年)Journal of Neurophysiologyの中で、Susan HarkemaとBruce Dobkin、Edgerton そして UCLA の彼らの同僚達が、歩行訓練プログラムがどのように対麻痺患者に有効となるかを説明する一助となるような、人間の脊髄から得られた詳細な証拠を報告している。彼らは、4人の完全脊髄損傷患者に補助付きでトレッドミル上を歩かせて、患者の3つの足の筋肉から電気信号を取り出して記録し、その瞬間瞬間の足への荷重も記録した。2人の健康体の人にも同じようにして測定した。
どちらの被験者の場合でも、筋肉の活動として測定される脊髄からの信号は足にかかる荷重に大いに依存していることが分かった。足への荷重が大きくなればなるほど、筋肉の活動(すなわち脊髄の信号)も大きくなるのである。さらには、筋肉の活動は歩行動作の過程に合わせるように起きており、ゆえに、歩行動作を進めるのにちょうどいいタイミングで筋肉の活動が起きているのである。この結果は、人間の脊髄が歩行の動作に同調するために、足にかかる荷重や複雑な感覚の情報に頼っていることの"すばらしい証拠"となる、とEdgertonは言う。
いつの日かそのようなデータによって、脊髄が歩行の過程をもっとも効率よく調節するために、どのような種類の感覚信号を必要としているのかということが分かるようになって、訓練処方を最適なものにするための一助となるであろう。しかし、多くの臨床医がリハビリプログラムの一部として運動神経トレーニング(loco-motor training)を取り入れるようになるまでには何年もかかるかもしれない。そのひとつの理由としては、他の方法を教えられてきた専門家たちは、トレッドミルでの歩行訓練がよりよい結果をもたらすことに納得しないからである。それは、一部にはその証拠となる事柄をあまりよく知らないからで、一部にはもっと大規模な比較研究がまだなされていないからである。
フィラデルフィアにあるトーマス・ジェファーソン大学病院のリハビリテーションの専門家である John Ditunno は「これらの新しい方法はどれもまだ以前の方法に比べて優れていると証明されていないと思っている」と述べている。
この新しい手法の擁護者達でさえも注意を促している。「もっとたくさんの研究をしてそのトレーニングが大きな違いを生むことを示さなくてはならない」と Edgerton は言う。「我々はこの方法が大きな違いを生むと思っているが、そのことは非常に重大な結論であるから、慎重になる必要がある。」
それらの実証のための研究の中にはすぐ実行されるものもある。マイアミプロジェクトのCalancie のチームでも運動神経トレーニングの試験をすでに始めている。トレッドミル上を歩かせる方法と、天井に取り付けられた円形状のレール軌道にハーネスを取り付けてそれで患者を吊り上げるようにして、ちょうどドライクリーニング店でラックをスライドしながら動くシャツのように、地面を歩くことができるという
方法の両方で試験をしている。天井のレールを使う方法では、患者は自分の足の下で動く床の上を歩く代わりに地面の上を動くことができるので、トレッドミルよりも現実に近い歩行ができる、と Calancie は述べている。
そして、間もなく他の改善方法が登場するかもしれない。今月掲載予定の Journal of Neurophysiology の論文で Rossignol、Barbeau と彼らの大学院生であった Connie Chau は、クロニジン(clonidine)という薬が、脊髄が運動をつかさどる信号パターンを出す手助けをすることが分かっており、運動神経トレーニングと組み合わせて用いた場合に脊髄を切断した猫の回復を早めることができるということを発表している。 (図2参照)
Rossignol が言うには、「脊髄猫は一週間以内に後ろ足で歩けるようになる」、そしてそれ以上は薬を必要としなくなるという。クロニジンなしの場合、同程度の回復をするには3,4週間かかる。このような結果から、将来は脊髄損傷患者は薬の投与と歩行訓練を同時に受けることになるかもしれない。
今のところ、若くて気立ての良い、かつてはオートバイの自由を謳歌した Thorsten Sauer のような開拓精神のある患者は、自分の足で数歩あるくことによって得られるほんの少しの自由に日々浴している。Sauer は力強く言う。「人間の体は座るためにできているのではない。時々は歩くべきなのだ。」
(中久喜健司 訳)
図1 足のコントロール
注入されたものであれ感覚ニューロンからのものであれ、神経伝達物質(小さな丸印)によってうまく刺激されると、脊髄の"中央信号発生器"(CPG)の働きによって、伸筋(E)と屈筋(F)をコントロールしているニューロンが両方に交互に信号を出すようになる。
図2 あっという間の回復
図中の線が示すように、クロニジン治療の前の脊髄を切断された猫は(B)のようにほとんど後ろ足を動かすことができない。
しかしクロニジン投与後は(C)のようになる。
普通の猫の動きは(A)に示されている。