| 障害者(特に脊髄損傷者)の 自動車免許保有実態の推定 |
1)身体障害者の運転免許所持者平成元年(1989) 150,640名で年率5%増加すると仮定すると平成10年には、225,960名になると推定できる。
2)東京都の障害者別免許保有者の内訳
1979年の東京都公安委員会の資料によると免許保有者の内訳がわかる。
下肢障害者 4,443人(49.5%)
上肢障害者 2,424人(27.0%)
聴覚障害者 987人(11.0%)
複合障害 763人( 8.5%)
その他 360人( 4.0%)
1. 厚生省が1991年に実施した障害者実態調査では頸髄損傷者は約2.9万人いることがわかった。
2. アメリカでの脊髄損傷者は、25〜40万人いると推定されている。ただし、鉄砲による損傷者が24%いるので、これを除くと19〜30万人となる。これを日米の人口比1:2で修正すると10〜15万人いると推定できる。対麻痺者と四肢麻痺者の比率が約1:1なのでこれを当てはめると頸髄損傷者は5〜8万人となる。ただし、完全損傷が45%なのでその数は2.3〜3.6万人となる。
一方、1991年調査時の2.9万人を年5%の増加率で1998年まで延長すると3.9万人になるので、アメリカの場合と一致する。
3. 以上から対麻痺者と四肢麻痺者を8万人と推定することが妥当であろう。
4)脊髄損傷者で免許保持者数の推定
1. 「在宅頸髄損傷者」の調査では、下位頸損者と高位頸損者との自動車運転者は、頸髄損傷者の23%を占めている。また、対麻痺者では54%が運転している。
2. 「頸損解体新書」の調査では、自動車で外出する人が67.5%で、その内43.0%が自分で運転している。従って、29%が自動車を運転していることになる。
3. 対麻痺者の運転者は、4万人×0.54=21,600人、四肢麻痺者では、4万人×0.29=11,600人となり、合計33,200人が自動車を運転している。
4. 運転免許を所持している障害者が225,960名なので、脊髄損傷者は14.7%を占めることになる。
5. 頸髄損傷者の損傷部位による数の分布は、
1.C4以上(28.3%)
2.C5(37.0%)
3.C6(26.3%)
4.C7以下(8.4%) となっている。
一方、外出時の介助の要・不要を上記の損傷部位で分けた図から読みとると・・・・
1. C4以上では、要(95名)不要(15名) 2. C5、要(115名)不要(40名) 3. C6、要(55名)不要(57名) 4. C7以下、要(5名)不要(30名)となり、損傷部位が
下方にずれて上肢機能の麻痺が軽減されるに
従って介助の不要が増加する。
そしてC6レベルがその分岐点にあることがわかる。
以上から、四肢麻痺者(頸髄損傷者)で、運転免許を所持している人を29%と推定したが、まさしくC6レベルで現状の自動車では免許を取得できる限界にあることが伺える。
5)運転できる脊髄損傷者の実態
1. 「在宅頸髄損傷者」の調査結果では、「自動車を運転できるが、車いすから自動車への移乗に介助者を必要とする」【介助付き運転】に属する人がいる。高位頸損者で3%、下位頸損者で7%、対麻痺者で8%報告されている。
2. 介助者無しに自動車に乗降し、運転する「無介助運転」の中には、自動車の乗降が出来ても、車いすを自力で積み込むことが出来ず、勤務先や外出先に車いすを預けておいた車いすを使用している人も含んでいる。
6)脊髄損傷の原因と受傷時の年齢
1. 「在宅頸髄損傷者」の調査結果からは、頸損者の傷害発生原因は、1.労働災害(40%)、2.交通事故(33%)、3.スポーツ事故(14%)となっている。また受傷年齢は、高位頸損者:30.4歳、下位頸損者:29.0歳、対麻痺者:32.2歳であった。
2. 「頸損解体新書」の調査では、障害の発生原因は、1.交通事故(45.6%)、2.スポーツ事故(23.3%)、3.作業中の事故(16.7%)であった。受傷時の平均年齢は、32.1歳で前記のデータと一致する。
3. アメリカの調査結果では、障害の発生原因は、1.交通事故(44%)、2.傷害(24%)、3.落下(22%)、4.スポーツ事故(8%)であった。受傷時の平均年齢は、33.4歳で、最多年齢は、19歳であった。
4. 日本における調査とアメリカの調査結果から、交通事故による受傷が多数を占めていることが理解できる。また、受傷時の平均年齢は、30歳代前半であり、元気な若者が多数を占めている。
7)自動車を運転しない高齢者・障害者の外出状況
1. 「高齢者・障害者のためのモデル交通計画策定調査(横浜市)−平成7年度 報告書−」の横浜市のモデル地区における調査結果から、外出状況は、高齢者が4.4日/週、障害者が3.5日/週と1週間の半分外出しているが、車いす使用者は0.9日/週、重度視覚障害者は2.8日/週と極端に低くなる。そして、車いす使用者は1.7日/週、重度視覚障害者は3.4日/週と外出頻度の向上を希望している。
2. 「かながわ県の移送サービス」調査からも、現状の公共交通を「利用できない」または「困難である」人たちは、door-to-doorサービスの「移送サービス」を平均月に3.0回利用していることがわかる。横浜市の調査結果と一致する低頻度の外出状況である。
3. 運輸省は高齢者・障害者のモビリティ向上のために「スペシャルトランスポートサービスに関する調査研究」を開始し、平成10年3月に出された報告書では、公共交通機関を「時々利用する」「ほとんど利用しない」が身体障害者で53.7%おり、その内68.9%が自家用車を運転して外出している。
高齢者では、前記と同じ理由で公共交通機関を利用しない人が36.0%おり、その内29.6%が自家用車を運転している。
障害者と高齢者とを比較すると、公共交通機関を利用していない人の比率が大きく異なり、障害者の多さが目立つ。そして、公共交通機関を利用しない人たちは自家用車に大きく依存している構造がわかる。見方を変えれば、自動車を運転できない重度障害者には外出することが出来ないのが現状であり、外出頻度が非常に少ないとの前記の調査結果に一致する。
参考文献
1) 身体障害者 自動車運転指導ハンドブック、国立身体障害者リハビリテーションセンター監修、中央法規出版、p3、1990.11
2) 身体障害者と移動、トヨタ自動車販売会社、p14-15、昭和56年9月
3) Spinal Cord Injury Statics,
http://www.erols.com/nscia/resource/factshts/fact02.html
4) 今西正義、頸損解体新書復活のあすに向かって、全国頸髄損傷者連絡会、1994年4月
5) 松井和子、在宅頸髄損傷者−その生活と意識−、(財)東京都神経科学総合研究所社会学研究室、1987年8月
6) 高齢者・障害者等のためのモデル交通計画策定調査(横浜市)−平成5年度概要版−、運輸省関東運輸局・横浜市民政局、平成6年3月
7) 高齢者・障害者等のためのモデル交通計画策定調査(横浜市)−平成7年報告書−、運輸省関東運輸局・横浜市民政局、平成8年3月
8) かながわ県の移送サービス〜移送サービス調査・検討委員会報告書、(社)神奈川県社会福祉協議会、平成10年3月
9) スペシャルトランスポートサービスに関する調査研究 報告書、(財)運輸経済研究センター、平成10年3月