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第 13 章
障 害 の 受 容


 この章の最初のセクションでは、損傷してから日の浅い人を対象に述べていく。障害によって起こるさまざまな反応について、また障害にどう対応したらよいかについて述べる。

 しかし、「日の浅くない」(ずっと以前からの)脊髄損傷者にとっても役立つものだろう。あなた自身、損傷して間もない頃に当てはめて、脊髄損傷と付き合ってきた今までの日々を再検証できるだろう。また、このセクションは、「断言訓練」*、ストレス対策、リラクゼーショントレーニング、時間管理、生活上の重要なことの選択に関して、役立つと思われる情報を提供する。これらは、脊髄損傷者にも、そうでない人にも有用である。

 〔*訳注〕 断言訓練:ありのままに感情表出を行なうことで、状況に応じて適切な自己主張をできるように行動を変容させる療法。


 障害(たとえば脊髄損傷)を持つことによって、自分は誰で、どうなりたいのか? 
家族を含め、他人とどう関わっていくのか? 
障害者としてどう生きていくのか?
という問題が生じてくる。

 この章では、これらの個人的な問題に対する提案をしよう。身体的なニーズについての問題とは違い、個人的で社会的な問題には、はっきりした解答や明確なる手段というものがない。社会で、あるいは個人として何をするかは、あなた自身にかかっている。これらの問題の解決は、容易ではないので、この章でいくつか提案をしよう。
 
 さらにこの章では、自立して生活するための情報と、障害者の法的な権利に関して述べる。一般的な自己啓発の本と公民権に関する本が、たいへん売れていることからも、これらのトピックが重要なことがわかる。個人や家族関係に関する問題が生じた場合は、ソーシャルワーカー、心理学の専門家または治療チームのメンバーに相談するべきである。


 ◆ あなたは人として変わることはない

 脊髄損傷は、たぶん、今までのあなたの人生に起こった最悪の出来事であっただろう。「あなた」は、起こった事実を変えることができないし、過去のものとして忘れ去ることもできないし、それを無視することもできない。とにかく「あなた」はそれに対処しなければならない。それは簡単なことではない。非常に重要な点を明確にするために、われわれはここで故意に「あなた」を強調した。毎年、多くの人が、事故によって脊髄損傷になっている。誰もが人として尊い存在であり、受傷して障害者になったからといって、このことが変わることはない。

 あなたは、依然としてあなたなのである!
 多くの人生経験すべてが一緒になり、あなたの人格を形成しているが、そのことは、あなたが歩き回るのに、足の代わりに車いすを使わなくてはならないとしても変わらないだろう。言い換えれば、あなたの個性、知性、他人との付き合い方、性格などは、損傷のあとで当然変わるだろうと考える根拠は何もない。

 もしあなたが、活発で、親しみやすく、嫌な奴で、付き合いにくく、気難しく、理屈好きで、親分肌で、結果を求める性格ならば、受傷後に以前と変わらない人生を送るのにうってつけの性格だろう。

 あなたが強い悲しみ、挫折、怒りのような感情を経験したとしても驚いてはいけない。人間誰でも悲しい出来事が起これば、このような感情になるのが普通である。この感情は、受傷後のすべての人に共通しており、いろいろな新しい経験をし、時間が経つにつれ色褪せていく。これらもろもろの感情や反応にどう対処したらよいかについて、以下に述べていく。


 ◆ あなたの障害観は?

 しばしば言われることだが、不意に障害者なってしまったことでもっとも難しいことは、健康であったときの強い信念、態度、誤った考え方を引きずったままであるということである。

あなたは、誰か障害者を知っているか? 
友人や家族の中に、障害のある人がいるか? 
会社の同僚や学校の友人にいるか? 

 障害者がいれば、その人と親しくなるにつれて、障害など関係なくなることに気づくだろう。最初の印象や最初の態度はかならずしも正しくない。そして、それらは時間が経つにつれて変わっていくだろう。

 障害者に対する態度や障害者に抱く印象は、人によってさまざまである。あなたが、障害者との係わり合いがまったくない、あるいは、あまりないような場合は、あなた自身も同様なことを感じるだろう。目で見てわかる障害のある人に対する共通の態度や最初の印象は何であるのか? ここにいくつかの例を示した。
 しかし、自分自身に対する態度と他人(家族、友人、他人でさえ)の態度は変えうるのである。しかし、信念は一晩で変わらない。これは、新しいことを学んだり、経験する中でゆっくり変化する。あなたは、リハビリテーション施設の中では「学生」であるが、外にあっては、人々の障害に対する考えを改めさせる「先生」の役割をしていることを感じるだろう。


 ◆ 生活技術

 生活様式の大きな変化に対応する方法は人によって異なる。脊髄損傷になったことに対してどう考え、どう感じるかは人それぞれである。

 ときに、他人の経験した問題が自分にも当てはまり、それを知ることが自分にも役立つ。他人の問題の解決法が自分にも役立つのである。

 このマニュアルですでに述べたように、「私は、誰なのか」ということを考えることは重要である。自分の問題を避けようとする人もいれば、いつでも誰かに話すようにしている人もいる。好きなトークショーの司会者に電話をしたり、「アビーさんの人生相談」*に手紙を書く人もいる。困ったときや、悩みが生じたときに対処するには多くの方法がある。本を読む、友人と話す、教育グループや、プロのカウンセラーに相談する。いずれにせよ自分にとってベストの方法を選ぶことが重要である。〔*訳注:米国の著明なコラムニストの人生相談欄〕

 初めてケガをした患者のほとんどは、「なぜ私が?」という疑問を持つ。彼らは好んで、「なぜ、私がこんな目に?」と自らに問いかける。

 「私は、つねに人を差別なく公平に扱い、正しいと思ったことをしてきた! それなのになぜ私が、こんな不幸な目に遭わないといけないのか?」

 あるいは、「今までのすべての悪い行ないの罰としてケガをすることになったのだ」という人もいる。「今からは良い生活をするから、もう1度歩けるように」と誓う患者もいる。ハロルドS.カシュナーの『悪事が善人に生じたとき』という書物に、こうしたことが詳しく書かれている。

 なぜ受傷したかという疑問に、あなたはどんな答えでもいいから結論を出さなければならない。そして、その疑問をいったん脇に置いて(忘れて)、将来に目を向けなければならない。

 人によって変化を受け入れるスピードは違う。変化を受容する過程は、しばしば「受容期間」と呼ばれる。受傷後に新しい生活様式に適応するのにどれくらいの時間を必要とするか、を見積るのは非常に難しい。受傷直後にあなたにとって重要なことは、今後の人生ではそれほど重要でないかもしれない。

 以下の例は、このプロセスを理解するのに役立つ。

 飛行機の操縦を学ぶことを想像してみよう。始めの頃は、馴染みのない機械や装置をどう操作したらよいかについて、多くを学ばなければならない。コックピットに初めて座ったとき、あなたの注意は、パネル上のダイヤル、レバー、装置、スイッチに集中する。基本的な飛行練習の後では、注意を装置や機械に注がなくても目的地まで飛べるほどまでに進歩するだろう。注意は計器、装置からはずれ、広い空のかなたへ向けられる。

 同じようなプロセスが脊髄損傷後に起こる。はじめは、どのように身体が機能しているか、装具、車いす、カテーテルなどの道具をどのように使うかについて学ぶ。しかし練習や訓練が進むと、注意は生活の他の部分に向けられる。

 (損傷に)適応するスピードは、生活に対する気持ちの持ち方によって大きく影響される。生活の変化にフレキシブルに対応できる人がいる。そのタイプの人は、変化に柔軟に対応する。一方では、がちがちで柔軟性がなく、何年か先までの計画に従って生活する人もいる。もちろん脊髄損傷は、彼らの予定には入っていなかったものだ。

 あなたの受容の進歩の度合いを知る良い手がかりは、
「将来私に何が起きるだろうか」
「残った身体の機能でどんな種類の職業訓練が受けられるのかを知りたい」
「私はどの方向に向かっているのだろう」
ということを考えたり、言葉にするときは、受容がかなり進んだと思って良い。

 信じるかどうかは別として、(損傷には)プラスの面があるのだ。何年か前に損傷したある患者は、 「今の生活はよりゆったりしたので、損傷前よりももっと豊かなものである。私は損傷に対処するために、自分というものをじっくり見つめ直しました。その結果、より人間として成長し、世の中を見る目が備わりました。

 損傷前に見過ごしていた物の価値を再発見し、いろいろなことに感動できるようになりました。」と感想を述べた。脊髄損傷となることを自ら選ぶ人はいないが、コインに裏と表があるように、世の中すべての物には、もうひとつの側面がある。


 ◆ 「正常な」感情

 あなたが直面する個人的な心の問題は、やがては損傷に関してよりも、毎日の生活により深く関係するようになることを心に留めておくべきである。以下で述べる感情は、あなたが生活する中で経験する感情のみならず、損傷直後の混乱した感情にもあてはまる。

 大変な出来事のあとには、さまざまな感情を経験するのが普通のことである。主に、怒り、悲しみ、挫折、苛立ち、混乱、孤立などである。あなたの感情は他人のものとは違うだろう。しかし、他人が同様の感情を抱いていることを知りたい人もいる。このセクションでは、体験に応じて起こる感情にどう対処したらよいかについて述べる。それらの感情すべてが、不快なものであるというわけではない! リハビリテーションの過程では、ユーモア、誇り、希望、達成感という感情が経験される。


 怒 り 
 他人に噛み付いているとき、物事が悪くなっているとき、叫んでいるとき、かっかとしているときなど、多くの人は怒りを経験する。しかし、何をするにも、怒りの気持ちがあっては物事はうまくいかない。

 「私が他人に対するように、他人に扱ってもらいたいか。」
と自問してみよう。もし答えが「いいえ」だったら、「誰が、何が、私の邪魔をしているのか」「なぜ私は怒っているのか?」ということを考えてみよう。このような自問自答は、問題を解決し、落ち着いて積極的な行動に移るのに役立つ。怒りの頂点に達して大爆発するのではなく、誰かに悩みや問題を話すことによって落ち着こう。


 ユーモア 
 いちばん最近、腹を抱えるほど笑ったのはいつなのか? 笑うということは、いわゆる「セラピー」という視点ではあまり注目されないものである。ましてや病院に入院しているときなどはなおさらである。しかし近年、医療に関する分野ではこの「笑う」ということの身体・心理面への効果が注目されている。

 『疾病の解剖学』の著者ノーマン・カズンズは、ジョーク本やコメディ映画や他の「楽しい」ものが、病気と戦う力をサポートしてくれると述べている。難しい問題に立ち向かったり、明るいムードを作る上で、「笑うこと」は大きなプラスの影響を与える。いくつかの例を挙げる。


 悲しみ 
 身体的な損失や、病気のあとに強い悲しみを感じることは当たり前のことである。きっとそれは、肉親を亡くしたときの悲しみに近いくらいのことだろう。たいていは、こういった悲しみに対して人は、泣く、引きこもる、拒絶する、親友にうち明ける、というような反応をする。でも、悲しみがとても強く、耐えがたくて、希望を失ってしまうほどのものである場合は、それに立ち向かう術を考える必要がある。

 いわゆる「深い悲しみ」と明らかな「うつ(鬱)」状態とでは、決定的に違ってくる。うつ状態になってしまうと、希望がなくなり、あきらめの気持ちになり、身体疲労がたまり、不眠になり、食欲が低下したりする。

 このような状態になるときには、まず「外向的行動」をしてみるとよい。たとえば、親しい人と話をしたり、将来プラスになることについて考えたり、コンサートに行ったり、おいしいデザートを食べたり、ためになる本を読んでみたり、何か楽しいことをしてみよう。

 もし、「そんなことをしたところで何の役に立つんだ……」と思うときは、リハビリテーションのスタッフと話し合ってみるとよいだろう。何か手がかりが得られるかもしれない。


 プライド 
 自分自身がとても重要な存在であるということをどうやって見つけるか? 特にリハビリテーションの場ではどうだろうか? こういったことは、あなたが見たり話したり行動したりするときに、とても大切になってくる気持ちである。
 あなたが日頃、「この人は何事にも誇りが高く(悪い意味ではなく)、自信に満ち溢れている」と思っている知人のことを思い浮かべてみよう。彼らのふるまいはどんな感じだろうか?

 自分自身を高く評価していると、それは自然にまわりに伝わる。自分がそうしようと努力すること自体が、ふるまいを変えていくのである。そのためにはまず、自分に言い聞かせることが第一である。 「私は一個の人間として価値がある!」

 人は誰でも欠点を持っている。でも、それに勝る個性も持っている。自分の良さを知ることによって、あなたのプライドはさらに高まっていくだろう。アルバート・エリスとロバート・ハーパーが書いた『理性的な人生のガイド』では、自重とプライドの気持ちを高め、持続させるためのとてもよい方法が載っているので読んでみることをお勧めする。


 欲求不満・混乱 
 何か新しいことを始めるとき、欲求不満や混乱といったものはつきものである。まず、それが何によって起こっているのかを明らかにすることが第一である。もしそれが「ある人」によるものであれば、できるだけ隠すことなくその人と話し合うことが大切である。コミュニケーションが解決の糸口になる。もしそうしてみてももっと悪くなってしまうのなら、「第三者」に相談してみるとよいだろう。人と話す前に「リラクゼーション法」(後述)を試みてみるのもよいだろう。穏やかにリラックスすることが大切である。

 ときに、問題は自分の中ではわかっているのにそれを具体的に取り組む方法がわからないこともある。そんなときは、「助けを求めよう!」
 他人と話すことにより、名案を思いついて問題が解決したり、非常に緊張する場面でも、落ち着いていられる方法が見つかるかもしれない。


 ◆ 人の気分を害さずに、どう自己主張するか

 どんなときだって、人は自分の思い通りにならなければ、イライラしたり、腹を立てたり、欲求不満になったりするものである。このセクションでは、他人を踏みにじったり傷つけたりせずに、事を成し遂げる方法について注目してみる。それはどうしたら、相手にいやな思いをさせずに主張をするかを考えることでもある。

 ひとりではとてもやりきれず「助けて欲しいなあ」と思うとき、今してること、されていることが自分にとってはとても「いやだなあ」と思うとき……そんな場面は人生ではいくらでも起こる。最近の調査では、多くの脊髄損傷の車いすユーザーが健常者と話をするとき、同じ目の高さになる台が欲しいと思っていることがわかった。これはコミュニケーションを前向きに進めたいという気持ちの表われだろう。

 ここでは、3つの基本的なコミュニケーションの形、「主張」「攻撃」「受け身」について述べてみる。 話の進め方として、まずそれぞれの全体的な特徴を示し、その後にそれぞれの典型的な「ふるまい」(ボディーランゲージや声色などの非言語的な表現方法)について述べていく。


 自己主張 
 「主張」はあなた自身の権利を確立するための手段である。アイディアや感情を直接的に、誠実に表現する一方、相手の立場を考慮すること、それが「主張」である。そこには自分と相手を尊重するという気持ちが含まれている。

 主張をするためには、まず相手に自分の言いたいことをはっきりと伝えることが大切である。同時に相手がそれをどのように考え、感じているのか尋ねることが重要になる。つまり、主張の本質は「協調とフェアプレー」なのである。

 正しく主張できているときの「ふるまい」は、からだの動きが言葉とかみ合っていて、それが助けとなり、力強く、何が言いたいのかがしっかりと強調されている。声の大きさは、その場面で適度なものである。目はキリッと引き締まっているが、相手を威圧するものではない。ジェスチャーは力強さを与える。そして、話し方は流暢になり、ぎこちない詰まりがなく、論理的で、明瞭で、キーワードがしっかりと強調されている。


 攻 撃 
 「攻撃」は、個人的な権利を確立しようとする手段である。ところが、ここには相手の権利を無視するという特徴がある。よって、コミュニケーションの方法としては誠実なものではない。たいていは不適当で、怒り、むかつきというようなネガティブな感情が生まれてしまう。

 攻撃が生み出すものは支配、勝利、ねじ伏せる、というものである。「勝つ」ということは、面目を失わせ、屈辱、見くびり、打ち負かしなどを相手に与え、それにより相手が弱気になり発言しづらくなって、必要なことや権利を守りきれなくなるまで陥れることである。こういった態度をとる人はきっとこんな話し方をしているだろう。

  「私はこう考える−−あなたは間違ったことを言っている。」
  「私はこうしたい−−あなたのしたがっていることは大したことじゃない。」
  「私はこう感じた−−あなたが感じたことには大した意味はない。」

 攻撃的なときの「ふるまい」は、支配的で相手を脅すようなものになる。じっと見つめて相手を威圧し、相手を支配したり、場に合わない大きな声を出したり、皮肉めいたり、威張った声色になり、親が子どもにするようにたてつづけに相手を指さしたりするものである。


 受け身 
 「受け身」は、誠実さや考えや信念を表現し損ねることによって、あなた自身の権利を失ってしまうことである。言い訳めいていて、自滅的な考えや感覚の表現は、相手があなたの存在をたやすく無視してしまう環境を作りかねない。こうした態度をとる人は、きっとこんな話し方をしているだろう。

  「私は重要じゃない−−あなたは私より上をいっているよ。」
  「私の感じ方は別に重要じゃない−−あなたがしたいようしてください。」
  「私のは大した考えじゃない−−あなたの意見がいいと思う。」
  「私には特にない−−あなたは優れている。」

 受け身には主張がなく、自分の希望を大事にすることに欠けている。また、他人が失望したり責任を負ったりするような場面を避けて通ろうとする。この態度の目的は、なだめ、争いを避けるといったものである。

 受け身の「ふるまい」は、人と目を合わせるのを避け、手が汗でぐっしょりになり、人をつかんだり、相手の主張が目立つように自分はすっと後ろに引いたり、肩を丸めたり、手で口を覆ったり、話している人から聞き手を遠ざけるように神経質なジェスチャーをしたり、ぎこちない姿勢をとったりする。

 声の調子は、単調に、あるいはおかしなまでに柔らかくなる。話し方は煮え切らず、たびたびつまずき、しきりに咳払いをする。怒ったときは、眉をつり上げ、薄ら笑いをし、ウィンクをするといった特徴が表情に表われる。一般的には、この場合のジェスチャーは主張を欠いており、弱さを示したり、不安げになったり、弁解めいたり、自分がへりくだることを示す表現をしたりする。

 こういったやり方は、断定的に行動することを怖がっている人たちが、自分の言っていることの「強さ」を和らげるために行なっているのである。これは、自分が言ったことで相手が怒らないように「柔らかく」するためにしていることなのである。


 ◆ ストレスに満ちた世界でのリラックス

 皆さんのまわりでは、いつもたくさんのことが起こっている。だから、日々のいざこざをいちいち全部扱いきれないということが多々あるだろう。生活からそういったストレスをすべて取り除くことは不可能であるが、その強さをある程度和らげて、心身の健康を保つ方法はある。

 健康上の問題をたくさん抱えることは、筋肉の緊張を高めたり、血圧を高めたり、心拍を速くしたりといった症状を引き起こす。そして、このような症状はみなストレスに関係している。脊髄損傷者の多くは、リハビリテーションの最初の課程で、たいへん「ストレス」を感じているようである。しかし、あなたがいつも会って話している健常者も、忙しさやストレスにつねに悩まされている。ストレスは私たちが取り組まなくてはならない共通のテーマである。
 このセクションでは、ストレスに対処する代表的な2つの方法−−「リラクゼーション」と「時間の管理」の仕方について紹介する。

 段階的なリラクゼーション
温かい幸福感を感じられないとき、心理的なストレスを受けている。段階的な筋肉のリラクゼーションにより、発汗と呼吸が低下するだけでなく、脈と血圧も下がる。深いリラクゼーションを習得すると、「抗不安剤」のように活用することができる。

 多くの人が、自分の筋肉が慢性的に緊張していることに気づいていない。段階的なリラクゼーションは、筋肉群のうちのあるひとつの筋肉を認識できるようにし、緊張と弛緩を体験することができる。こういったリラクゼーションをすぐに習得できる方法を紹介しよう。基本的なやり方は、体の一部分の筋肉に同時に力を入れ、そのあと力を抜くというものである。

 最初は、全部の筋肉の動きを完全に出すことができないと思うが、できる範囲からでかまわない。それぞれの筋肉に5〜7秒くらい力を入れて、その後に20〜30秒休む、という手順で行なってみよう。

 このとき、力を入れている感じと抜いている感じをはっきり区別するように行なうことを心がけよう。このエキササイズは楽な姿勢(座位で頭部を保持した状態)で行なうこと。そして習得するまでは、1日2回は練習するようにすること。
  1. 両腕を曲げて、二頭筋(力こぶ)と前腕(ひじから手首までの間)に力を入れ、腕を自分の肩に引きつけるようにする。できたらリラックスしよう。

  2. おでこにしわを作って、同時に、かつできるだけ早く頭をうしろにひく。そこからきれいな円を描くように頭を時計回りに回す。次に逆に回す。このとき、顔が「クルミ」みたいに(渋顔・細目・口すぼみ)なるように、筋肉に力が入っているだろうか? 口の中で舌が上側を押して、肩が丸まっているか。できたらリラックスしよう。

  3. 胸いっぱいに空気を入れて背筋を伸ばす。息を止めて、できたらリラックスしよう。おなかを突き出すように深く息を吸う。息を止めて、できたらリラックスしよう。
 首と背中の動きを行なうときには、それをやってもよいかどうかを主治医に聞いておくこと。

 リラクゼーションのやりかたを上達させるために、基本的な手順をカセットテープに録音しようと思うなら、それぞれの手順のあいだに「間」をおくことを忘れないこと。この「間」がその次の動きに進む前に、収縮・弛緩の感じをはっきりとさせてくれるものになるからである。

 ほとんどの人が深いリラクゼーションを始めたときは、限られた範囲での達成感しか感じることができないと思う。しかし、それは練習で変わってくる。最初は、20分間練習をしてもうまくいかないかもしれないが、最終的にはできるようになる。

 また、最初は筋が完全にリラックスしたと感じても、実は一部の筋線維がまだ緊張しているということがよくある。完全にリラックスするためには、あなたがそうしたいと思う気持ちが大切である。練習中のリラックスの場面で「さあ、もっともっと!」と、自分を応援しよう。また、リラックスしたときに深い呼吸をするのもひとつの方法である。


 時間の管理
 これは、もうひとつの重要なストレスに対処する方法である。退院の日がやってくると、もうその後はあなたの行動やスケジュール管理を手助けしてくれるスタッフはいない。また、あなたが職場に初めて戻ったときのためにも、日常のことを計画立てる術を高めておくことが必要不可欠である。

 以下の内容はマーシャ・デービス、エリザベス・エッシェルマン、マシュウ・マッケイらが書いた『リラクゼーションとストレス減少のためのワークブック』を参考にしてある。

 時間は「終わりのない意志決定の連続」とも考えられ、大なり小なり、時間が生活のようすをしだいに変化させている。不適切な決断をしていると、欲求不満や自尊心を損ないストレスを生んでしまう。あまり上手でない時間の管理をすると、次のような6つの症状が出てくる。
  1. 大慌て。
  2. いつも不愉快な選択に迫られている。
  3. 生産性のない活動がだらだらと続き、疲れて気が抜ける。
  4. いつも締め切りに間に合わない。
  5. 休息や他人と関わる時間がない。
  6. ほとんどの時間が要求や細かいこと、やりたくもないことで埋め尽くされているという感じがしてくる。
 こういった症状から脱出するための時間の管理法は、忙しい人たちの生活を能率的にする方法を教えている専門家やコンサルタントによって色々と開発されてきた。『あなたの時間と人生のコントロールの仕方』の著者アラン・レイケイは、自分のことを「時間計画と人生設計のコンサルタント」と呼んでいる。また、『直接的な決断をするセラピー』の著者ハロルド・グリーンワードをはじめ、たくさんのセラピストもまた、意志決定する場面にどう立ち向かうか、また、どのようにして明確な意志決定を下すか、という方法を開発することにより、時間管理の理論の構築に貢献してきた。

 これらの時間管理の方法は、3つにまとめられる。
  1. もっとも重要な目的に合うように優先順位を決め、何が重要で何が重要でないかのベストの選択ができる。
  2. 実行可能な予定を組むことで時間を創出し、あまり必要でないことを除去できること。
  3. 基本的な決定を自分でくだすことができること。
 効率的に時間を管理する3つの段階を試みる前に、どうやってあなたが自分の時間を費やしているのかを知る必要がある。その方法を紹介しよう。まず、あなたの1日を3つに分けてみよう。
  1. 起きてから昼食まで
  2. 昼食後から夕食まで
  3. 夕食の終わりから寝るまで
 次にノートを用意して、いつも持ち歩くようにする。そして、今わけた3つの区分の終わりのとき(昼食後、夕食後、寝る直前)それぞれに、自分の行動と、それらに費やした時間を書いていく。すべての時間の合計は、あなたが実際に起きていた時間と合うように留意する。

 シンプルに仕事の内容を交際、決まっている仕事、優先順位の低い仕事、生産的な仕事、ミーティング、電話応対というように記載していってみよう。たとえあなたが、仕事で時間を効率よく使えるようになることにあまり関心がなかったとしても、これはやってみよう。この「時間目録」づくりを3日間続けてみること。

 3日経ったら、それぞれの区分の合計時間を計算する。もし必要なら平均時間を出してみてもよいだろう。あとで、優先的にすることを大まかに知るために、もっとも時間を使っていることから、そうでないことまで、その区分に順位を付けてみよう。

 自分に合うように、その区分を変えたり、何かを加えたりしてみよう。たとえば、家で家族と話す時間と家の外(社会)で話をする時間を区別してみたり、自分の楽しみの買い物の時間と、生活に必要な買い物の時間を分けてみてもよいだろう。もしかしたら、自己管理のための時間と、いわゆる「健康法」のための時間の区別をしたくなったり、退屈な家の雑用をいくつかの区分に細分化したくなったりするかもしれない。大切なことは、時間の使い方を分けたり、調査することで、それぞれの行動にもっと時間を費やしたいのか、あるいは、そうでないのかを決定することである。
 想像力を豊かにして、心に浮かんだことを何でも書き記してみよう。考えたり分析をしたりはしないこと。何かが頭に浮かんできたら、それをそのまま書き留めるのである。書いたものから長期的な目標を見出すだろう。

 次にそれらから、1年間で成し遂げられる目標を立てる。最後に毎月の目標を立てる。ここには仕事の優先順位、改善の計画、レクリエーション活動などを書いていくのである。

 これであなたは、長期、中期、短期という3つの目標リストを作ることができた。それぞれのリストには、「一番上」「真ん中」「底」といった引き出しを作り優先順位をつけておくとよいだろう。

 やれることをやって目標を達成しよう
 自分ができることを徐々にやることで、「一番上の引き出し」にあることを成し遂げていこう。目標に向かってやること、それはあなたが最優先することである。その項目を1ヵ月実行してみよう。そうすると、翌月にはきっと次の項目が出てくるだろう。やってみると一番上に残る物もあれば、下の引き出しに下がる物もある。これを続けていくと目標はつねに最優先すべきことのためのものになるだろう。

 たとえどんなに小さなことでも、毎日その課題を成し遂げる努力をしていこう。

 もし、とても忙しかったり、具体的な目標がなかなか見つけることができないのなら、1日の「すること表」を作ってみるとよいだろう。「すること表」は、その日に終わらせたいことすべてからなる。そしてそれぞれの項目を「一番上、真ん中、底」に分類する。その日の中で「一番上」のことが終わっていないのに「底」をやっているのをみつけたら、時間を浪費していると思って間違いない。

 「一番上」の項目を終わらせて「真ん中」に進み、それも終わったら「底」のことをやる、というやりかたに変えてみること。

 「すること表」に合わせてやっていくと、「底」のことで、ほとんど無視してもよいようなことが浮き彫りになってくる。このとき「80−20の法則」を参考にするとよりよいと思える。これは、「すること」の全体の20パーセントのことが、80パーセントにあたる価値をもたらしているという意味である。

 時にはくじけてしまうこともあるだろう。くじけそうなときは、たいてい心の中で「今日はやめた。家を掃除したあとにそれをやろう」などと言い聞かせているものである。この状況から抜け出すには、「何が優先するのか」をはっきりとさせておく工夫、たとえば目標を書き出して家やオフィスに張り出しておくなどをするとよいだろう。その目標をみるたびに「何が優先することなのか」を思い出すだろう。


 時間を作ること
 ここでは、時間を作るための4つの大切なルールと9つのオプションを紹介する。

 《4つの大切なルール》
  1. 「ノー」と言えるようにしよう。もしあなたの上司が頼んだ場合は別にして、無駄なことに時間を費やさないように断ろう。「時間がありません」と言う勇気を持とう。どうしても言えないときは、前項の「自己主張」を参考にしてみよう。

  2. その日にすることの中で、いちばん大切なことが完全に終わるまでは、「底」の引き出しに手をかけないようにしよう。あとでもできることなのだから。

  3. 不測の問題や予定していなかった出来事などに対処できるように、予備の時間を作っておこう。行動するための時間配分をしっかり作っておけば、慌てなくてすむが、それに加えて避けられない問題に対処するためのわずかな予備の時間を作っておくとより良いだろう。

  4. 休憩をするための時間を作ろう(緊急時は、別ではあるが)。休み時間には、前に述べたリラクゼーションなどをしてみよう。

 次に9つのオプションを紹介する。このうち、あなたに合う3つの項目を選んで実行するようにしてみよう。
  1. 待っているときや空き時間に行なうための「5分間でできる課題」のリストを作っておこう。

  2. 同時に2つのことをする練習をしよう。会社へ通勤する間に大切な人へ書く手紙の内容を考えたり、掃除をしながら夕食の献立を考えたりするなどである。

  3. 今は重要ではない課題を、自分の子どもや、秘書や、家政婦、義理の母など他の人に依頼しよう。

  4. 30分から1時間、早起きをしよう。

  5. テレビを見る時間を減らそう。

  6. 大切なことをしているときは「逃げ道」を塞いでおこう。

    ・ 空想にふけるのは、今やっていることが終わってからにする。
    ・ 遊ばないようにすること。
    ・ 本を遠ざけること。
    ・ ちっぽけで、たいして大切ではない用事から離れること。
    ・ すぐにアイスクリームや道楽に走らないようにすること。
    ・ あとでしたほうがよっぽど効率がよい用事のことを忘れる。

  7. あまり生産的ではない行動は、できるだけすぐにやめる。(大切なことをしているときにかかってきた電話などは、すぐに切るように心がけるなど。)

  8. 捨てることのできる手紙は一度確認してからすべて捨てる。

  9. 完璧主義をやめる。やれることをやる。人はつねに間違いをするものなのである。


 ◆ 自立した生活

 人生は病院の壁の外側にあるか。もちろん、人生は病院の外にあるものである。社会の中で生きていく上で、自立した生活は、ひとつの道である。自立した生活とは、自分で行なうこと、つまり自分の生活に責任を持つことである。大切なことは、どこで生活するのではなく、どのように生活をするのかということなのである。たとえば、ある人は「自立した生活とは、アパートでひとりで暮らすことである」と言ったとする。自立した生活とは、ある人が自分の身体的、社会的、経済的なニーズや利用可能な物的資源に基づいたライフスタイルの生活をすることである。一方で自立した生活とは、ナーシングホーム〔療養施設〕に住むことである、と言う人もいる。ナーシングホームを生活の場として決めたジュリー・グリオムさんに話を伺ってみた。

 「多くの人がナーシングホームを選んだことによって、『人生が終わり、もう2度と太陽の日を浴びることもなく、友だちにも会えない』と思っているようである。

 ナーシングホームについてのある事実は、自分の手には負えない身体のケアを必要としている人にとって、もっとも効率よく利用できる場所のひとつであるということである。

 私は、フルタイムの仕事につき、ボランティア活動にいつも大忙しである。もし、自分のための小さな施設を自分で管理運営するとなれば、たくさんの時間がかかってしまい、私には自分のやりたいことをするための時間がなくってしまいます。私はそんなことに時間を費やしたくないのです。
 
 ナーシングホームは広いし、スタッフは多いし、利用者それぞれに合わせたサービスがそろっている。もし私が午前2時に帰ってきたとしても、そこでは私をベッドに乗せるためにスタッフがいてくれます。自宅で同じようにしてもらうために家政婦さんを雇うような経済的余裕はとてもありません。」

 あなたがどうやって自分に必要なものを準備するかを考えるときにも、自立した生活の考え方は大切である。何かをするためにその補助となる装置を使おうとする人もいれば、何か難しいことに対処するときに、自ら身体的、精神的チャレンジを試みる人もいる。あまり機械を使うことを好まず、助けが必要なときに人の力を利用するようなやり方を好む人もいる。

 覚えておくこと――自由な選択は以下のような決断に基づくことを意味する。


 ◆ 社会で生き抜く術

 脊髄損傷者にとって社会で生き抜いていくためには、それなりの世渡り術が必要になる。それはあなたが、
といったことにさらされるからである。

 社会で生き抜く術とは、サービス、感情面のサポート、身体的援助を受けようとするときに役立つのである。時間の管理の仕方や主張の仕方は今まで述べてきた。社会で自立して生きていくためのもうひとつの武器は、社会生活でしばしば直面する決断をいかに下すか、ということに関係している。次のセクションでは基本的な「社会的な問題」の解決策について述べていく。


 社会生活での決断
 この決断は、あなたの未来を決定的にするものである。であるから、こういった疑問に「正解」はない。すべては一人ひとりの目標によって決まるもので、その目標はあなたしだいでどうにでも変えられるものなのである。社会生活での決断は、社会的な自立、精神的な自立の基礎となる。以下に、2つの重要な問題を述べた。
 したいことやニーズを満たすために社会で渡り抜く術を学ぼう。

 あなたが脊髄損傷者になったあとでの人との接し方は、ケガをする前と何ら変わりがない。相手と目をあわせて、スポーツや天気について話したり、あなたが今までしてきたようにふるまえばよいのである。

 もし障害によって生じる特別な社会的問題に直面した場合は、それにどう対処したら良いだろうか。問題に対処する方法は大きく分けて2つある。

 ひとつは、誰にでも必要とされる「社会的コミュニケーション能力」があるかどうかということ。もうひとつは、障害に対する、「一般的な」反応への対処の仕方を学ぶことである。

 こういったことに対するアプローチは、障害を持つ者として自分を見つめる手助けとなるだろう。

 たくさんの社会的な問題、たとえば性のパートナーを見つけることや、いろいろな人と出会うこと、自己主張をしたいこと、などはすべての人に共通する課題である。しかし、ウェイトレスがあなたの同伴者に「お連れ様のご注文は何に致しますか?」と注文を取りに来るような問題は、直接あなたの障害に関わっていることである。一般的な「社交術」(自己主張、いかに怒りに対処するか)によって解決できるのである。障害に関係した特別の社交術とは、あなた自身が障害を持たない人たちと、どうやってつきあっていくかを学ぶことでもある。


 影響力のあるコミュニケーターになろう
 障害を持っている人は、障害を持たない人たちの考え方や行動を理解しなくてはならない。同時に、彼らのやり方がストレスになったり、どうしても理解できないようなこともあるだろう。すべてのコミュニケーションは2面性を持っている。コミュニケーションの障害にも2面性がある。そのため、コミュニケーションや相互関係がうまくいかないときには、2つの大切な問いかけをする必要がある。
  1. 自分はいちばん効果的で、ベストなコミュニケーショ技能をとっているだろうか?
  2. 相手の情報不足による誤解なのか、効果的なコミュニケーション技能の欠落なのか。
 もしあなたがベストを尽くしているのであれば、2つ目の問いかけについて考えてみよう。もしその問いかけが「イエス」であるのなら、あなたのまわりの人は情報不足に陥っていることになる。それならば、その情報を伝えるのは誰だろうか? ……それはあなた自身である。もし、相手のコミュニケーションの仕方自体が上手でないのであれば、それは相手の問題になる。

 実際、障害者は、障害を持たない人たちの言葉や行動が、残酷で自分たちを見下げていると感じることがしばしばあるようである。でも彼らに悪意はないのであり、障害者と付き合う良い方法を模索しているのである。

 あなた自身がベストを尽くしているのに、物事がうまくいかないときは、あなたの障害に関係した特別の能力や理解が必要となる。たとえば、あなたの障害について、新しい友人や雇い主と、いつ、どのように話したらいいかをあなた自身が判断しなければならない。この能力は、実際に経験して学んだり、他の障害者に相談したり、社会の固定観念に対する効果的、生産的かつ有用な方法を見出すために、読書などによって学ぶことができる。

 こういったことは、決して楽なことではない。しかしマイノリティーのグループ(障害者たち)は、いつでもあなたが障害を持たない人たちにこういったことを伝える人になってくれることを期待している。自分からはその役割を求めなくても、車いす・杖・他の装具などがそうさせていくのである。だから、この能力を習得することによって、自信が増し、自己を確立することができるのである。


 ◆ 望むなら働くことができる

 仕事は、われわれが生活していくうえで重要なことである。仕事によって、その人物が判断されるように、われわれにとって仕事は、社会的にも精神的にも大変重要である。家族、肩書きといったことは、仕事の次に重要である。仕事は、どの程度の社会的地位なのかを判断するのに影響する。「私は今、○○である」−−そのことが、あなたがどんな人であるかを連想させる。仕事イコール人生である、と考える人は多いだろう。仕事から得られる満足感は直接、あなたの人生の質に影響する。

 脊髄を損傷した場合、「私は働けますか? どんな仕事ならできますか?」と質問するかもしれない。その答えは、「あなたにもし働く気があれば、働くことができる。」

 W.ミッチェル(1975年に脊損受傷)は、次のように述べている。
 「受傷以前に私が探していた仕事は1万件以上であり、しかもどれも可能であった。今は、9千件である。私は、なくした千件についてくよくよするか、あるいは、残っている9千件に注目するかだ。

 いずれにしても、2千あるいは3千件以上の仕事を一生のうちにしようなどという人はいない。」  もし、仕事を探したり、教育を継続して受けたい場合は、職能訓練の専門家に相談をすること。


 ◆ 家族や友人

 あなたが脊髄を損傷したとき、まわりの人たちは、あなと同様に動揺しただろう。あなたがリハビリをがんばり障害を克服する姿を見たまわりの人たちは、ショック、不安、悲しみ、苦しみを感じるかもしれない。彼らの反応は、あなたと同じものもあれば、まったく意外な反応をする場合もある。あなたは、彼らがどのように反応するか、あるいはなぜそのように反応したか理解できるときもあれば、そうでないときもあるだろう。いずれにせよ、たいていの場合、あなたに起きた突然の障害は、彼らにとって予期せぬ望まない出来事だったのである。彼らにも、あなたにも、障害を受容するためにしばらく時間が必要である。

 これから障害を受容していく期間に、あなたと家族や友人がお互いに手助けできる方法を以下に述べる。
  1. あなたが感じたすべてのことを話すこと。その障害をオープンにすることで、ほかの誰が、どのようにその障害について話しているかということを、考えなくても済む。特にあなたは、気が楽になる。皆があなたを愛し、あなたも皆を愛しており、それは(新しい生活を)スタートするのに悪い環境ではない。

  2. 親友や家族は、障害のことを口に出すと、かえって気まずくなるのでは、と心配している。そこで、あなたが口火を切って話し始めるべきだろう。それはつらいことかもしれないが、長い目でみれば最善の方法なのである。タイミングが非常に重要である。障害の受容は、回復の過程であるので、問題、課題に挑戦する自分の負けじ魂(根性)を信じよう。もしあなたやまわりの人が、話し合う雰囲気でないときは、少し先延ばししても良いだろう。回復の過程で、いつか話すのに適当な時期はかならず来るだろう。

  3. 自分の感情を隠さないようにすること。家族や友人のために強くなる必要はない。それでは、かえって彼らはあなたに、話しづらくなってしまう。

  4. 家族や友人も社会の一部であり、障害に対しての共通の誤解や誤った態度を示すかもしれないことも覚えておくこと。あなたは、可能なときに彼らに対してそのこと(誤解や接し方について)を話すこと。あなたは、彼らに真実を話す必要がある。そして、それによって家族や友人の誤解が解けることがわかるだろう。

  5. もし家族が、脊損施設の近くに住んでいるなら、家族支援グループへの参加を希望するかもしれない。施設の掲示板をときどき見るようにすること。

  6. 家族や友人があなたのために何でもしようとし、行き過ぎることがたまにあるかもしれない。それは障害者にとっては、息苦しく感じられるものである。しかし彼らにとっては、単にいつも他人に求めている普通の行為なのである。このことを認めなければならない、さもないと、あなたや家族、友人が共に疲れてしまうのである。

  7. あなたは、どんなことをどのようにしてもらいたいかを考えなければならない。家族や友人が過剰な手助けをしていれば、彼らに話すこと。あなたがどのように感じているかを話し、過剰な手助けは望んでいないことを教えてあげることが必要である。

 受傷後しばらくして落ち着いたあとの感情は、受傷直後のものとは変わっていることだろう。あなたは、この変化に満足感を感じ、健康を保つことが必要だと感じるだろう。

 外出の経験を積むことで(たとえば、車やバス、車いすで出かけること)、非常に解放された感じを受けるだろう。これらの変化が、新しい生活スタイルに適応し、新しいことを学ぶ手助けになるだろう。

 脊髄損傷者の生活への適応の方法は、人それぞれである。あなたが精神的にも身体的にも健康状態を維持できれば、どんな方法を選択してもかまわない。

 家族や友人も、障害を受け入れてきていることだろう。身体的な変化を除けば、今まで愛してきた人と、あなたが何ら変わりないことがわかるだろう。なかには、たとえあなたを非常に愛していても、身体的変化を受け入れられない人もいる。彼らは、単に出来ないのである。障害者であることに関係なく、世の中の人間関係は、つねに変化しているのである。脊髄損傷者となることは、やりがいのある人生を送るチャンスなのである。


 ◆ 親になること

 親になることを決意し希望するなら、あなたは親になることができる。あなたは深く悩み、考えた上でその決定をしたはずである。共通した悩みは、子どもに対しての身体的な世話や経済的支援をする能力に不安をもつこと。車いすで生活していることに対して、子どもがどのように反応するかである。他人の世話をすることに対して、憂鬱になったり、おっくうになったりするかもしれない。子どもたちは、(親としての)あなたの世話やケアを必要とし、子どもたちが自分に反応してくることがわかると、大変うれしく感じるだろう。子どもたちの吸収力、適応力に驚くことだろう。

 子どもを育てることは大変に骨が折れることで、どの親も何かしらの不安を感じるものだということを忘れてはならない。受傷によって子どもの様子は変わるけれども、それが重大な障壁とはならない。多くの役立つ道具や技術を用い、本を読むことで克服できるだろう。リハビリチームのメンバーに相談してみると良いだろう。

 脊髄を損傷して生活が変化してきているとき、子どももその過程を体験する。もし、入院生活で自宅から離れた場合、子どもの年齢に応じて彼らが理解できるように説明することが必要である。身体的な障害が親と子の関係を変えるものではないことを理解する必要がある。ある研究によれば、障害をもつ親の子どもと、健常の親の子どもの間に、精神的・社会的発達に差はないと報告している。

 大切なことは、親としての権利は、受傷した後も変わらないことを銘記することである。子どもの保護の権利や養子縁組を求める権利は、障害によって否定されるものではないのである。 

 心にとめておくべき大切な心づかい
  1. リハビリテーションのプログラムに子どもたちも参加させよう。家族と病院の外に出かけて過ごす時間を作ること。
  2. 自分の家族を自分と同じ障害を受けた家族に紹介しよう。子ども同士でも話をさせよう。
  3. 病院の内外で子どもを含めた家族で話しをする時間を持つように。
  4. 退院したあとでも、障害や自分の気持ちについて、引き続き子どもたちと一緒に話し合うように。ソーシャルワーカーや臨床心理士のカウンセリングサービスを利用するように。
  5. 親子関係についてリハビリチームメンバーと考えることもできる。

 親になる決断
 第1段階として、子どもを持つことができるかどうか、身体的能力を検査することを望むだろう。それは泌尿器科でチェックをするように。親になる気持ちがあれば、ソーシャルワーカーや臨床心理士に相談すること。身体的に子どもを持つことが不可能とわかれば、養子や人工授精を検討すること。次章には、このことについて役立つ情報が述べられている。


 ◆ 社会的・法的な権利

 法的な権利や義務の行使
 脊髄を損傷した場合でも、他のアメリカ国民と同じように法的な権利が守られている。加えて、以下に述べる事柄に対して連邦の法律がその権利をサポートしている。

 その内容は、職業リハビリテーション、教育、移動、社会的・医療的サービス、税の控除、セキュリティーに関してである。それぞれの州で、障害者のさまざまな法的権利が保障されている。

 この章では、代表的な連邦法を示し、障害をもった有権者あるいは消費者の立場から、どのようにしたらその権利を聡明で責任のある方法で行使できるか提示する。どのように権利を主張し、どのように良い結果を得るかを、ある一般的なガイドラインに即して説明したいと思う。


 主張する市民として
  1. 基本的人権を知ること。
  2. 投票。
  3. 連邦機関で処理されたあなたの書類の記録をとろう。以下に述べることを含む。
    ・ 日付
    ・ 話した人
    ・ 手紙・申込書等の書類のコピー
  4. もし権利が侵されたとき、公民権に関わる苦情処理担当者、行政官、管理者に交渉すること。
  5. 州政府や地方政府機関の苦情の申し立て窓口を知っておこう。
  6. 次に述べることは、あなたの義務である。
    ・ 攻撃的にならないように主張すること。
    ・ 公民権の苦情に関して、法律で定められた処理のステップを知っておくこと。
    ・ 「聞く耳を持つ」こと。

 主な法律がどのように自分と関わっているのか
あなたのために多くの法律が存在し役立っている(表13−A参照)。


 法の世界
 連邦と州の立法機関は、われわれの生活に影響する法律を制定している。法案が承認され法律として制定された後、条例が制定される。これらの条例は、法律が政府機関、ビジネス社会、市民生活で、どのように実施されるかを定めている。

 条例は政府機関の規律となり、われわれの日常生活に直接的な影響を与える。たとえばADA(Americans with Disabilities Act:アメリカ障害者法)は、公の機関や民間の機関に大変影響する、細部にわたる要件を定めている。アメリカ国民で、この法律に従う必要性を感じていない人はいないはずである。この法律が正しく実施されていなかったり、法律で保障される権利が守られていないときは、法的な手段を行使すべきである。裁判システムは、法律を支持するためにあり、憲法に合わない規定を排除している。


 ADA(アメリカ障害者法)
 1960年代半ば以降立法化されている公民権関係法のうち、1990年に成立したアメリカ障害者法(ADA)は、公民権を保障するもっとも重要な法律のひとつとなった。ADAは、障害者への差別を包括的に禁止し、ほとんどすべての社会生活に影響を与えている。ADAの5つの主要項目は、雇用、連邦および州政府機関、公共的設備、電気通信、その他、についてさまざまな条項で規定している。

 連邦の5つの機関によって出された条例は、それぞれの要件に関して具体的に規定している。司法省、運輸省、雇用機会均等委員会、連邦通信委員会、建築と移動のバリア委員会には、ADAを実行するため制定された規定があり、その法律を運用することに関して専門的に人々をサポートしている。税収業務では、2つの特例が規定されている。ひとつは職場で障害者のバリアを取り除くための減税であり、もうひとつはADAに従うために行なう、小企業向けの税額控除である。

 【表13-A】 障害者関係法
 年 代  公法番号  法 題         主 な 条 項
1968年 90-480 建築バリアー法 連邦政府の出資ないし融資で建築される建物は、障害者がアクセス可能であること。
1970年 91-453 大都市交通法 地方の権限において、公共交通機関のサービス計画とその実施に際し、アクセス可能とすることが望ましい。
1973年 93-87 連邦高速道路法 法に基づく連邦政府の助言を受けた交通機関の設備は、アクセス可能とすること。例えば、「ハイウェイファンド」は、歩行者がアクセス可能な横断歩道の設置に使うこと。
1973年 93-112 リハビリテーション法 連邦政府が出資するプログラム・サービス・社会福祉給付に関して障害者の差別を禁止する。例えば、建築や交通のバリアを検討する委員会を作る。
1975年 94-173 修正連邦住宅法 連邦政府が援助する住宅のバリアを除去する。
例えば、住宅都市開発省内に、障害者の自立生活に関する事務局を設置する。
1978年 95-602 リハビリテーション
の包括的サービス
と能力 
開発に関する修正法
連邦政府の職業リハビリテーション計画の優先順位に自立生活センターを入れる。例えば、自立生活センターを連邦政府の資金で設立する。
1980年 96-265 障害者の社会
保障修正法
収入から要件を満たす障害者の自立生活に要した費用の 一定額を控除することで、就労困難とならないようにする。
1984年 98-435 高齢者と障害者の
投票権利法
投票場所・用紙その他投票に関するすべてをアクセス可能とする。
1986年 99-435 航空利用法 航空輸送の規定において、障害者の差別を禁止する。
1988年 100-430 適正住宅修正法 住宅の建築で障害を理由とする差別を禁止する。例えば、新築の集合住宅はアクセス可能であること。
1990年 101-336 アメリカ障害者法 1964年公民権法が規定するように、障害者の市民的権利を拡大する。
1999年 106-170 就労チケット及び
就労促進法
「障害者の補足的所得保障」(SSDI)及び「補足的所得保障」(SSI)対象者の職業、雇用・ヘルスケアサポート。

 以下にはADA各編が適用される。

 第1編 雇 用
 15人以上の被雇用者がいる企業の雇用主は、どんな分野に雇用するかにかかわらず、適格な障害者を差別してはならない。この内容には、雇用・昇進・付加給与・病欠などが含まれる。はなはだしく困難な場合は別として、雇用主は障害者が存分に力を発揮できるように、障害者が不便を感じないような設備を整えなければならない。


 第2編 連邦及び州政府
 公的な機関の責任については、リハビリテーション法第504条に述べられている。連邦および州政府、すべての部門・機関はアクセス可能とするプログラムを実施しなければならない。それは、連邦の資金を受けているかどうかにかかわらず、すべての連邦および州政府に適用される。本章の重要な点は、ほとんどの政府機関にADAコーディネーターを新たに配置しなければならないことにある。消費者(障害者)がバリアに遭遇したとき、コーディネーターはその情報を得て、障害者問題の知識のない人々にアドバイスすることができる。

 公共の輸送機関であるバスは、リフトを装備しなければならない。既存の交通手段を利用できない障害者にはパラトランジット(ハンディキャブ)を用意しなければならない。


 第3編 公共的設備
 ここで述べることは、すべてのビジネス、サービス、機関に影響している。公共的設備とは、民間の企業によって運営されている、以下のようなものである。

ホテルなど宿泊施設  
飲食サービス施設 
映画館や競技場のような展示やエンターテイメント施設
会議場や講堂のような人々が集まる場所
販売やレンタル施設
銀行・クリーニング店・法律事務所・医者・会計士のようなサービス機関
駅のような交通機関
博物館や図書館のような公的な展示や収集する場所
公園や動物園のようなレクリエーション施設
私立学校のような教育機関
老人施設やデイケアやホームレス・シェルターのような社会的サービス機関
ジムやゴルフコースのような運動する場所など

 公共施設のスペースは、使いやすいように、構造やコミュニケーションに関してバリアフリーでなければならない。バリアを取り除くことが比較的容易で安価な場合は、それを取り除かなければならない。計画的なバリアフリー化としては、階段にスロープをつける、広げられたドア、乗り物のハンドコントロール、手にしやすいよう再配置された展示棚、アクセス可能な駐車設備やバスルーム、標識の改善などがある。公共施設の所有者も経営者も、バリアを取り除く責任がある。

 公共施設では、障害者にも一般の人と同じように情報が伝わるように、補助手段を講じなければならない。新設されるすべての建物はアクセス可能でなければならない。

 民間交通事業者もアクセス可能な車両や、同等のサービスを障害者に提供できるようにしなければならない。バリアを除くことが相対的に容易であり、コストがかからない場合は、実施しなければならない。バリアとは、段差、狭いスペース、TDDサービス(タイピングできる障害者用電話)の欠落、あるいはウエイターが視覚障害者のためにメニューを読み上げる方針などを含む。もしバリア除去がとても困難な場合、個々の事業者はADAアピールプロセス(審判手続き)を求める。


 第4編 電気通信
 ADAは、この分野で、聴覚や言語障害のケースに対して、連邦の通信システムの改良を行なっている。電話サービスのプロバイダーは、中継サービスを供給しなければならない。中継オペレーターは、TDD使用者と通常の回線使用者間の会話を中継する。 


 第5編 その他
 建築と交通のバリアに関する検討委員会(アクセス・ボード)は、障害者がアクセスしやすい設備や車両に関するガイドラインを発行する。


 リハビリテーション法第504条
 リハビリテーション法504条やその規定は、障害者の差別を禁止している。その規定は、連邦政府の資金をうけるプログラムのすべてに適用される。504条でカバーされる3つの重要な分野は、教育、雇用、コミュニティサービスである。


 1999年就労チケット及び就労促進法
 就労プログラムのチケットは供給者を利用者が選択することに重点を置いた新しい職業斡旋サービスである。それは柔軟性をますよう規定され、いくつかの州では2001年から始まり、2004年からは全米で開始される。

 就労促進法はメディケアのパートA給付(入院治療)を発展させたもので、どのような掛け金の支払いなしに現在から3〜7年半実施される。法律は各州の医療プログラムのオプションとして労災による障害者を対象とする。これらのプログラムはどれも2000年10月1日から発効するよう計画されている。

 〔訳注:メディケアは老人・障害年金受給者対象で、パートAは入院サービス保障の強制加入の病院保険、パートBは外来診療を対象にした任意加入の補足的医療保険〕

 離職後の復職促進のための「社会保障給付」、及び個人が復職のために就労促進プログラムを使っていた時の医学的再診断によらない新たな政策として、この法律は2つの新たな選択肢を示す。これらの改革は2001年1月1日から発効する。

 この法律には他のいくつかの助成金とデモンストレーション・プロジェクトがある。その目的は労災による障害者に更にサービスするものであり、多くの障害者の就労促進するために連邦機関のグラント・タックス・クレジットや他の収入が得られるよう奨励することにある。


 教育を受ける
 高卒後の教育プログラム及び制度は入学試験、クラス、テスト、寄宿舎、介助サービスに適切にアクセスできるよう、なされなければならない。ある場合には、教育機関により現場で補助機器が提供されるだろう。


 ◆ ヘルスケア及び資金計画の選択肢

 「望ましいケア指示」
 「望ましいケアの指示」(advance care directives)、医師への指示、生前意志(リビングウィル)の基本書式の記述は、すべて同一の用語を使用する。これらの書式の形式は州ごとに、あるいは病院ごとに異なっているだろう。

 生死に関わる状況で自分の望むことを医師に伝えられない場合、裁量の範囲とヘルスケアの種類をあなたが選択できるように援助することが、これら書式の全ての目的である。

 病院及び他のケア施設は既存の「望ましいケアの指示」の情報をあなたに告知する必要がある。
 蘇生の指示をしないこと、及びヘルスケアのための代理人の永続的権限は、あなたの望むヘルスケアについて伝えるための他の2つの方法である。

 以下はそれぞれの説明である。蘇生処置をしないことの指示は、あなたが主治医に告げた後、医師がその指示を記載した時に効力を生じる。入院中かナーシングホームにあなたがいる間、スタッフが心肺蘇生をしないことの指示は主治医によって記載される。

 医師の指示がない時には最大限の蘇生処置が実施されるだろう。ワシントン州のようないくつかの州では、あなたの用意した蘇生をしない指示は地域の救急隊員が従うことが認められている。ヘルスケア提供者に、あなたの州ではこの選択が可能かどうかたずねなさい。

 「望ましいケアの指示」はあなたがコミュニケーションできない時に効力を生じる。これはあなたがコミュニケイトできない時に、あなたの望む・あるいは望まないヘルスケア手続を明記した代理人によって記載される書面で、あなたがサインすることで発効する。

 ヘルスケアに関する代理人の永続的権限は、あなたがコミュニケイトできない時に発効する。代理人は、あなたがヘルスケア手続と治療プランについて決定するであろうことを見極めて書面を作成し、あなたがサインする。あなたは代理人が「望ましいケアの指示」を委任した人であることを示すことが必要であり、ヘルスケアの希望を話し合わねばならない。


 ◆ 第三者による金銭管理

 これらは、あなたの金銭管理を第三者が援助する必要がある時に利用されるだろう。

 この手順を記述するのにしばしば使われる用語は、なじみがなく人を混乱させるようなものである。いくつかの州ではこれらの手続きの名称は異なっているかもしれないが、しかしその内容はふつう同じものである。

 法的な援助が必要な時、常に代理人がコンサルトしてくれることを覚えておきなさい。


 代理人の権限
 これはあなたの住む州で契約された事務処理で、金銭管理などの権限をある人に与える。それは資産を売る権限も含まれる。この種の事務処理はあなたや第三者がどちらもあなたに関する事項を実行することができることを、意味している。あなたはこの権限を手離すことなく第三者と共有すること。

 退役軍人管理局(VA)への信託
 これはあなたが金銭管理できない場合の特別書面を作成する退役軍人管理局内のプロセスである。退役軍人管理局は連邦政府給付金事務を指定するもので政府からの給付金も可能である。信託はあなたの金銭を管理する。

 裁判所の財産(金銭)後見人
 あなたが金銭管理できないことを申し立てた時に所定の用紙にサインする裁判所の手続である。その後、裁判所は金銭管理のためにある者を指名する。この場合、あなたは自分で金銭を管理することはできない。

 裁判所指定の後見人(社会的、医療的決定)
 あなたが医学的ケアや社会的に好ましい状態について意思決定できない時(それはあなた自身やその他の人にも危険な状態である)、所定の用紙にサインする裁判所の手続である。裁判所は意思決定のために後見人を指名する。これは金銭管理については該当しない。


 ◆ 社会資源を得る

 必要な社会資源を得る最も効果的な方法は以下の通りである。

 地域の社会資源を見出し、職業リハビリテーション機関などの情報・紹介機関や、各州にある「障害者の雇用に関する大統領委員会」の関係機関とコンタクトを取ること。
     




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